ミミズクちゃんと幼馴染001

※名字は「羽角(はすみ)」で固定
さくっとステータス:個性はシベリアワシミミズク。目と耳が良くとっても暑がり。髪は黒混じりの白、目はオレンジ。爆豪、緑谷と幼馴染。

▼2人が出会ったのはまだ爆豪の個性が発現する前。

爆豪家の隣に越してきた際に母親がを連れて挨拶に伺ったのがきっかけだった。同じ年の子供がいると分かりせっかくの縁、少しお茶でもしようということになり爆豪家に招かれたのだ。拙い言葉で自己紹介を交わし親に言われて2人で遊ぶことになったが生まれた時から個性を発現していたは昼に強くない。ぼんやりと眠そうにしているに始め良い印象を持てなかった。



「いけー!オールマイトー!」
「……」



自分の大好きなオールマイトの映像を一緒に見ていても特に反応を示さない。言葉や表情はコミュニケーションを取る為の重要なツールだというのにほとんど話さないし表情も動かずでどう接すればいいのか分からなかったのだ。自分はつまらないときはそう言うし、逆にしたいことがあるときも言う。なんの発信もしないは摩訶不思議な存在だった。さらに不思議なことが起こった。



「あらあらったら」
「あら寝ちゃった?」
「ごめんなさいねえ この子まだ個性に慣れてなくて」
「いいのいいの!」



一緒におやつを食べているときに何と彼女は寝たのだ。うつらうつらと船を漕ぐなんてものではない。割としっかり眠りに入っている。信じられなかった。その瞬間までこんなにも美味しいプリンを食べていたというのに眠るなんて!それからもよく家に遊びに来たり、幼稚園で彼女の様子を観察するようになった。理解できないというのが気持ち悪かったのだ。別に遠ざけても良かったのだが親同士が仲良くしている以上会うことは避けられないし、彼女の言動にやきもきしても何故か嫌いだとは思えずで。



「なんではずっとねてるの?」
「ふくろうさんはね、昼に寝たくなっちゃうの」
「ふうん」
「それにまだ"個性"を上手に使えないみたい」



いつだったかの母親に尋ねてみた。「勝己くんにはいっぱい迷惑かけちゃってるね、ごめんね」と申し訳なさそうに、でも柔らかく微笑む。それを聞いて、が寝ている間にフクロウについて調べてみた。夜更かしするヒトがいるように、昼に起きているフクロウだって当然いるがやはり一般的には夜に活動するものらしい。これが彼女の"普通"なのかと知れば、さして気にならなくなった。

▼きっかけは幼稚園での出来事。

その日はお泊り保育の日。昼間いっぱい遊んだ園児たちはぐっすり眠っているのだが中には家が恋しくて泣きだす子もいる。そんな子を先生たちがあやす中、爆豪は別に寂しくなったわけではないが泣き声が気になったり何だか落ち着かなくて寝付けなかった。何となしに寝返りを打つと、暗くてもよく分かるオレンジの瞳と目が合い一瞬身体が跳ねる。



「……ねないの」
「あ…べつに」
「ふうん」



そっちこそ、と思ったがそうだ。昼によく寝ている彼女の姿はもう見飽きるほどだが夜はいつも起きているのだろうか。でも彼女の本来大きいはずの真ん丸な瞳は、今も眠そうに瞼で少し覆われている。しばらく見つめ合っていた2人、先に動いたのは珍しいことにの方だった。布団から手が伸ばされる。



「…なんだよ」
「……さびしいからにぎってほしい」
「はあ?」



嘘だろう。そんな、いつもと変わらない表情で何を言っているのか。でもどうしてか彼女の言葉を拒否する気にはなれなかった。仕方なしにであるという風に装って出された手を握るとはほんの少し。よっぽど注意して見ていないと分からないくらいほんの少しだけ口角を上げてゆっくり目を閉じていく。ぽっと胸の奥に火が灯るような、温かい気分になった。そして、あんなに冴えていた爆豪の目もとろんとしてきて気付けば夢の中へ。



「……おはよう」
「…はよ」
「よくねれた ありがとうかつき」



朝目が覚めても2人の手は繋がったまま。夜のように目が合えば、ゆっくりと言葉が紡がれる。出会ってから、名前を呼ばれたのは今のが初めてではないだろうか。彼女は、自分のことをちゃんと認識してくれていたのか。彼女は、自分と手を繋いだからよく眠れたのだろうか。また胸の奥が温かくなった。昼間、まだコントロールしきれていない個性のせいで無意識にミミズク化してしまったままどこかでうたた寝しているを見失った先生が探していた時、爆豪はすぐに居場所がわかり先生に教えると。



「ありがとう勝己くん!」
「勝己くんはちゃんのことよく見てるのね~」



なんて褒められた。ぼんやりお昼ご飯を食べているの手伝いをすれば大きなオレンジの瞳が自分だけを見る。他の誰が呼んでも無反応か少し顔を動かすだけなのに自分が呼べば「……なに」と返事をする。言い知れぬ満足感が爆豪の胸をいっぱいにした。それからだ。彼女の世話を焼くようになったのは。自分がいなければだめなのだ、自分だけがを助けられるのだと確信したのだ。