ラッキーガールと雄英001
※名字は「加守(かもり)」で固定
さくっとステータス:個性は幸運(運気操作)で自身に関わる物事の運が良い。触れた相手の運気を操作することも可能。不定期に体調不良になるリスクがある。(父が運気操作、母が加護の個性)両親共の髪色を受け継ぎ水・桃・紫のグラデーションが輝く星空ヘア。
▼入学に至るまで。
思えば少女の個性は物心つく前から発現していたのだろう。まずくじ運が強かった。商店街のくじ引きは欲しいものが当たるし、席替えだって行きたい席に行けた。記憶にはないが変質者に目を付けられ襲われそうになったときも人通りが少ない場所だというのにたまたま警察が居合わせて助かった。周りの人や環境、色んなものに恵まれている自覚がある。だからこそ少女は自身も誰かの、大切な人たちの力になりたいと思ったし、運だけではどうにもならないことをできる限りの努力で補った。勉強や身体能力の向上はその大半で、運が良いから上位にいると言われないために頑張った。そんな少女は今、雄英高校ヒーロー科の実技入試に臨んでいた。
「ハイ スタートー!」
プレゼント・マイクの声を合図にそれぞれ仮想敵を行動不能にしポイントを得るために行動を開始する。も例外なく動き出したのだが自身はパワータイプではないためどう攻略するか考えを巡らせていた。この試験、個性によって差がつきそうだなと思いながら岩などを上手く使って"運"で仮想敵を転がせたりしているといつの間にかお邪魔ギミック、倒しても0ポイントの巨大仮想敵が近くまで来ており、多くの受験生が逃げ出しているではないか。もこれは無理だと移動しようとしたとき仮想敵によって壊された建物の瓦礫が一瞬反応の遅れた者たちに向かって落ちてくるのが見えた。誰かの制止の声が聞こえたが立ちすくんでいる者のところまで全力で走って1人の身体に触れ、その先で固まっている2人を押し倒すようにこの身で覆う。
「うわああああ!」
「アレ潰されただろ絶対!?」
瓦礫がすべて地面に落ち舞った砂埃が消えていく中からいくつかの影が動くのを見て周囲は驚きの声を上げた。お邪魔ギミックは運良くそのまま進んで行ってしまったようで辺りに仮想敵は見当たらない。それを確認したはふう、と息を吐いて自分の下にいる2人と近くで尻餅をついている受験生が無事でいることに笑顔を見せる。
「もう大丈夫だね!」
「……あ、え」
「だめかと思った…」
を含む4人の周りだけを避けるように地に倒れているコンクリートの山。直に体験した3人も、遠くから見ていた者たちも、唖然としていた。
「怪我無い?立てる?」
「う、うん」
「……え、今の、君何かした?」
一人一人に手を貸して立ち上がらせ、問いかけには口元に手を当て片目を瞑る。
「ラッキーだったね!」
結論から言うとは無事雄英高校ヒーロー科に合格した。これからヒーローの卵として"Plus Ultra"の日々が待っている。真新しい制服を纏い、るんるんと通学路を歩くは早くも数人から入学祝いと激励の言葉を頂いた。実技試験では仮想敵をそこまで倒せたわけではなかったのだがレスキューポイントというものもあったらしく、試験終了まで可能な限り他の受験生のサポートもしていたのでそれが良かったようだ。入学初日、見事一番乗りで教室に着き期待に胸を膨らませキラキラオーラを振りまいていたは座席表を目にして教卓に頭をぶつけた。
「なぜ…私だけはみ出してるの…?!」
横に4列縦に5列、綺麗に並んでいるはずの机は唯一窓際だけ縦が6列になっておりその最後列にの名が記されている。いきなりの受難に肩を落とした。そもそも1クラス定員20名と聞いていたのだがこれは一体?とはいえ悩んだところで座席表は変わらないので席へ向かう。
「皆どんな子なのかな~!」
こんなにもわくわくとしていたというのに張り切って早起きしたからか席について数十秒、はばっちり船を漕いでいた。周りが騒がしくなってきた頃はっと顔をあげるとすでに前の席には女の子が座っていて、目を輝かせる。とんとん、と肩を指でノックすると綺麗なポニーテールを揺らして彼女が振り返った。
「おはよう!私加守!」
「おはようございます、八百万百と申します」
「百ちゃんって呼んでもいい?」
「えっ、ええ…」
戸惑いながらも頷く八百万にはお礼を言いながら頬を緩ませる。
「百ちゃんはすっごい美人さんですなあ!」
「そんなこと…私は加守さんの髪の方が美しいと思いますわ」
「ほんと!?やだ嬉しい~!」
「自慢の髪なんだよ」と朗らかに笑うに八百万も口角を上げた。やはり美人である。来て早々に素敵な仲間と知り合えてラッキーだったと喜ぶは終始笑顔を滲ませていた。