敵襲撃後、1-Aの生徒たちは順番に事情聴取を受けた。
も塚内たちに自分に起こったことや得た情報などを一通り話し 荷物をまとめて帰るように言われ教室に戻ったのだが、己の席を前にはたと気付く。
「(コスチュームのこと忘れてた…)」
昔からユキヒョウ化した時は、大概家での事だったし外でも両親の許可のもとで変化したり治癒を使ったりだった為身に着けていた衣服は身内が回収してくれていたのだ。これからは自分でしないといけないなと祖父と話していたのに先の一件では相澤たちに意識がいっていたからかコスチュームのことなど完全に頭から抜けていた。しかも更衣室に制服も置いてきたままである。動きを止める
に八百万と轟が声をかけた。
「
さん?どうされました?」
「疲れたのか?」
「あ、だいじょうぶ ふくわすれてきちゃったの」
取りにいかなくちゃ、とため息を零す。体力が回復すれば自分の意志で人の姿になれるので勝手に戻って裸を晒すという心配はないが、コスチュームのところに下着などもあるはずだし放置するわけにはいかない。2人に心配してくれてありがとうと告げくるりと身体の向きを変えるとちょうど蛙吹がこちらに向かってきていた。
「
ちゃんのコスチュームならここにあるわ」
「え!」
「あの場に落ちてたものは全部持って帰ってきたから大丈夫よ」
そう言いながらコスチュームを直し、
のリュックにこっそり下着を入れる蛙吹に瞳を輝かせその身体に頭をこすりつける。
「つゆちゃん!ありがとう!」
「ケロケロ、これくらいどうってことないわ」
「つゆちゃんすき!」
「私も
ちゃんが好きよ 制服も取りに行きましょう」
「ロッカーを勝手に開けるのはよくないと思って誘いに来たの」と微笑む姿に
は感激の声をあげた。教室を出て行く蛙吹に、尻尾をピンと立てまとわりつくようにくっついて行く
。その様子を見ていた八百万は再び頬を染め両手で口元を覆う。かわいい、うらやましい、私も力になりたい、うらやましい!八百万の頭はそれでいっぱいだった。とりあえず鞄の番をしていようと席につく。轟も何となく気になったのか2人が更衣室から戻ってくるのを待っていた。
「あれ ももちゃん、とどろきくん」
「
さん!おかえりなさい!」
「ただいま~」
「ケロ、2人ともまだ帰ってなかったのね」
何だかうずうずしながら自分を見ている八百万に首を傾げつつ、制服もリュックに入れてくれている蛙吹にお礼を言う。それに返すように頭を一撫でし気を付けて帰るようにと言って彼女の席に戻って行った。さあ帰ろうと机にあるリュックに目をやる。八百万と轟は
の纏う雰囲気がしょんぼりしたものになったのを感じた。
「りゅっく、せおえない…」
「!!!」
「(…こいつ可愛いな)」
は顔を上げ、さらにうずうずと訴えるように視線を送ってくる八百万のほうを見る。
「ももちゃん」
「はっ はい!!」
「りゅっく、せおわせてほしいのです」
「はい!!喜んで!!!」
勢いの良い返事を聞き
は前足を浮かせて直立状態になった。リュックの口がちゃんと閉まっているのを確認し肩紐をそっと腕に通していく八百万。いざ尻尾ではない部分に触れてみて、最高にふわふわだしツヤツヤだし何か良い匂いするしもう八百万はいっぱいいっぱいだった。そんな彼女を知ってか知らずか、
はお礼を込めて蛙吹の時のように頭をすりすりと擦り付ける。もう我慢できない。八百万はふわふわの身体をぎゅっと抱きしめた。
「
さん抱きしめてもよろしいでしょうか!?」
いやもうやってんだろ。轟は内心そう思いながら大人しくされるがままになっている
を呼ぶ。
「家どこだ?」
「えきのほう あるいてかえれるよ!」
「送る」
「えっ がっこうからちかいから、だいじょうぶだよ」
「その状態なら誰か一緒の方がいいだろ …それに、」
「最後敵がお前のこと見てた」という轟に八百万はバッと身体を放し驚きの声をあげた。そして送ってもらったほうがいいと彼女まで言うので甘えることにした
はゆったり尻尾を振る。
「わたし、しあわせものだあ ふたりともすき!」
「!!!わ、私も好きですわ!!!」
「…おお」
おまけのおまけ。
治療を受け病室で寝ている相澤を見舞いに来たプレゼント・マイク。
「イレイザー!調子はどうだ!?」
「うるせぇ」
「ユキヒョウちゃんに感謝しろよ!限界まで治癒の力使ってたぜ」
「…ああ」
「つーかイレイザー見たことある?ユキヒョウちゃん」
「何言ってんだお前」
「完全にユキヒョウになった姿だよ!」
「…あ?」
「見たことねぇの?サイッコーに可愛かったぜ!」
「……」
「何か落ち込んでたから撫でてみたらよォ、めっちゃふわふわ!!!」
「ふざけんなお前…ふざけんな…」
「コワッ目血走らせるほど!?!?」