学校帰りの道をぼんやり歩いていたら目の前を猫が横切り、可愛いなあ野良かな?なんて見ていたら向こうから車が走って来て危ない!と思ったときには身体が勝手に動いていて、私は撥ねられた。悲鳴や心配する声が聞こえ、起きなくちゃとうっすら目を開けると、腕の中にいた猫と目が合う。ああ、無事で良かった。そう思ったのが最後、意識を失った。

顔に違和感を感じ、意識が浮上する。何だかとても長い間眠っていたような。そういえば私猫を見てて…そう、車に撥ねられてそれで、…それでどうなったの?死んじゃったの?というかさっきから顔が、気持ち悪い。その原因を確かめるために目を開けると猫のどアップ。その猫は一生懸命私の顔を舐めていた。猫の向こうにはリスやら狼やらたくさんの生き物が見える。えっ狼!?えっ怖っ!?焦って身体を起こして周りを見渡した。どこを見ても緑、緑、緑。これは、森デショウカ…?だとして私はなんでここにいるの?住んでいた場所は都会というほどでもないけど、田舎でもなかったはずだ。車に撥ねられたのだって車道だし、コンクリートの上だし。周りの人が救急車を呼んでくれたのなら病院だろうし。アッ病院の庭かあ!なわけない。そもそも私、怪我してない。撥ねられたはずなのに無傷だ。どういうこと?私って超タフだったの?混乱しまくっている私に、一頭の虎が近づいて来た。



「(えっ虎!?コワッ!?)」



食べられる!?びびる私を余所に虎はゆっくりそばに寄り目の前にぼとっと何かを落とした。果実?なんだかすごく不思議な模様なんだけど食べれるのこれ?持ってきた虎に目を向けるとその子は目を細めた。よく分からないけど、食べ物みたらお腹空いてきたし遠慮なく頂いておこう。もぐ、



「、ま゛っ」



っずううううううう!?激まっず!?何これ食べ物!?ちょっと待って、よく分からない見た目の超まずい果実ってどこかで…。どこかでというか、私の大好きな漫画にあった所謂悪魔の実というやつ。これもしかして悪魔の実?そうだとしたらカナヅチになっているはずだ。どうにかして確認したいところだけど見た限りでは海とかは近くになさそう。ダメもとで動物たちに水のある場所を知らないか訊ねてみると、通じたのかぞろぞろと同じ方に動き出す。動物たちについて行くと、その先に澄んでいて綺麗な湖があった。そーっと腕を浸けると何となく脱力感が襲ってくる。浅いところなら溺れるまではいかないかな。そう思って全身浸かってみたら一気に力が抜けて倒れこみそうになった。ギリギリ、様子を見ていた虎が支えてくれて助かった。そのまま湖から出してくれる虎に涙が出そうだ。



「まちがいなく悪魔の実だ…何の能力なんだろう…」



そばにあった木に背を預けて座り込んでだらんと伸ばした足をぼんやり見つめる。私を起こしてくれた猫がそろっと視界に入ってきて太腿に上り身体を丸めて落ち着いた。こいつ可愛いな。というか何だか猫に縁があるなあ。意識を失う前も目が覚めてからも。虎もネコ科だし?



「私も猫になったりして、あっはっは」



あっはっは……は…あれ、なんか、景色変わった?視線が下がった気がする。だって、足に乗ってた猫が目の前にいるし。そばで寝転んでた虎がやけに大きいし。ふと見下ろした手は毛がふっさふさで、持ち上げると魅惑の肉球があった。てとてとと慣れない四足歩行でもう一度湖に行き、水面を覗くと猫の顔。Oh…



「猫になってる…」



首や胸あたりのモフ毛、耳の飾り毛、このゴージャス感は間違いない、メインクーンだ。しかも真っ白な毛にオッドアイとか、なんかちょっとかっこいいやんけ…。ネコネコの実、モデルメインクーンって感じでしょうか。いくらか試してみたところ自分の意志で人型と獣型に、あと人獣型にもなれるのがわかった。あと獣型になってても人間の言葉で話せる。それから動物たちと食べるものを探して食べた後、とりあえずお腹いっぱいになりほっとしたからかあっという間に眠りに落ちていった。
第2の人生スタート!?


BACK