悪魔の実を食べてしまった運命のあの日から、私は色んな世界の色んな場所に移動できる?ことがわかった。というか今のところ自分の意志関係無く気付けば飛んでいるので移動"してる"って感じか。これコントロールできるようになるん?ここ数回の移動では飛んだ先が水の中だったことはないけどそうなる可能性がないとはいえない。そしてそうなった場合、私の第2の人生(?)が終了するやつ。できれば自分で調整したいんですけど~。あといい加減人に会いたいです。何故かどこに行っても森とか砂浜とか無人のところで仲良くなるのは動物だけなのだ。今?今は無人島です。人どころか動物も見当たりませんが?そろそろ泣くぞコラ。
すっかり慣れてしまった悪魔の実の能力を使って猫の姿になり砂浜をうろうろしていると、遠くから船が近づいてきた。なんかドクロっぽいの見えるけどあれ海賊船じゃね?えーせっかく人に会えると思ったのに海賊とはこれ如何に。せめて温厚な感じでありますように…。なんて考えてる間に間に船は島に着いてしまっていた。少し離れた場所に止まっている船をじっと見る。あの海賊旗ちょっともしかして「ぉぉぉぉぉぉ!」麦わら被ってね?っていうかなんか叫んでね?
「モコモコおおおおおおお!」
「ごふっ」
船から飛んできた何かに掴まった。何かっていうかもう麦わら帽子を被った海賊旗を掲げる船から手を伸ばして飛んできたということは彼しかいないんだけども。突然の衝撃に一瞬意識が飛んだが何とか持ち直して軽く頭を振る。私の身体を両手で掴んで持ち上げている相手を見ると想像通りの姿。
「にっしししし!何だおまえすげーモコモコだな!」
眩しいくらいの笑顔をみせる彼を下から上まで観察する。草履、半ズボン、赤いベスト、麦わら帽子。うん間違いなく物語の主人公ルフィさんである。第2の人生初の人間がこんな大物でいいんだろうか、ありがとうございます!感動のあまり泣きそう。その存在をしっかりと目に焼き付けていると船から他の人が降りてこっちに向かってくる。
「おーいルフィ!どーしたんだよいきなり!」
「見ろウソップ!白いモコモコだ!」
「モコモコ…?猫…か?」
「モコモコだ!」
ばーん!と特徴的な長い鼻を持つウソップの前に突きだされる。続いてそばに来たオレンジ髪の美人さんナミにも同じことを繰り返し、2人に見つめられる。
「ずいぶん大人しいわね」
「つーかデケェな」
「すんげー気持ちいいぞこいつ!」
「メインクーンね、猫の中でも大きな種類よ」
ウソップ、ナミの後ろから別の声がした。黒髪美人のロビンお姉さまだ。美女2人…隊長!非常に目の保養であります!
「可愛いじゃない!ルフィ私にも抱かせてよ!」
「だめだ!おれが持つ!連れて帰る!」
「連れて帰るってお前、」
「首輪はついていないし、飼い猫ではなさそうだけれど」
「仲間にする!」
「すぐこれだよ!どーすんだよナミー…」
「はあ…言い出したら聞かないんだから」
脇に両手を差し込み持ち上げられ、ぷらんぷらんした状態で船へと連れて行かれる私。先頭を進むルフィの後ろに三人が並んで歩く。人間ですと言うタイミングを逃し猫のまま流れに身を任せていたんだけども仲間にするとは困った。というか今の彼らの認識ってただの猫なのに仲間にするってどういうことなの?どうするの?ペット?
「なんだそいつ」
船に戻ったルフィたちを迎えた残りのクルーは一斉に私を見た。剣士さんの反応は決して間違ってはいない。怪訝な顔で訊ねた彼にルフィは「そいつじゃねえ!ネコだ!」と返していた。剣士さんことゾロと、金髪素敵まゆ毛なコック、サンジとサイボーグフランキーさんは見ればわかると言いたげに眉を寄せる。ドクターなトナカイ、チョッパーくんはキラキラと目を輝かせてこっちを見上げていた。ガイコツなブルックさんはよくわかりません。
「ルフィお前、その子女の子だろ 雑に扱うんじゃねェ」
「かわいいな!」
「チョッパーもそう思うか!かわいーだろこいつ!」
「聞けクソゴム!下におろすかちゃんと抱えろ!」
サンジのレディへの優しさは動物にも向けられるんだね…としみじみ思っていたらチョッパーの前におろされた。
「こいつ仲間にするからな!」
「はあ?ネコをか?」
「ホント可愛らしいネコさんですね、私賛成です」
「お前名前何ていうんだっ?」
「あ、です」
「へえっていうのかあ」
「あ?今、」
「「「「「「「しゃべったああああああああああ!?」」」」」」」
「可愛い名前ね」
皆が驚いている中一人微笑んでるロビンお姉さまはさすがっすね。
「ね、ネコがしゃべった…!?」
「ってことはつまり…」
「能力者…!?」
ひいっと後退る安定のウソップ、ナミ、チョッパー。ルフィはしゃべるネコすっげー!とハイテンションで再び私を掴んでくるくる回った。ちょっとやめてほしい。と思っていたらルフィの頭にサンジの踵落としがきまった。おかげでルフィの手から逃れた私はしゅたっと着地してサンジに向かってお礼を言う。途端に顔を緩ませくねくねしだしたサンジを見たゾロがキモいと零して二人の喧嘩が始まった。皆の様子を眺めているとそっと頭に何かが触れる。顔を動かしてその正体を探すと綺麗に微笑んだままのロビンお姉さまが撫でていた。「人型になってもらっても良いかしら?」と言われたので頷いて元の姿に戻ると、またもや一斉に視線が集まった。
「おおおお!なんだお前不思議人間か!」
「いやだから能力者だろ!」
「かっ かわいこちゅわあああああん!」
「どうも…ネコネコの実?を食べた猫人間です…」
「よし!お前仲間になれ!」
大好きなルフィに、大好きな笑顔で言われて、本当なら即答で船に乗せてもらいたいところだけど色々とそうはいかない。まず戦えないし怖い。それに悪魔の実の能力とは別に身についた不思議な力をコントロールできてない以上ここに居続けられる保証がない。ということを、元の世界で(恐らく)死んだっていうのと、この世界のことを知ってるというのを除いて説明した。しかしまあそれで納得するような性格でもなく、「それが何だ!仲間になれ!」と言い続けるルフィ。ルフィ以外の人はそれなら仕方ないと頷いてくれてはいたけど。
「話は何となく理解したけど…」
「、それじゃあうちの船長は諦めねえぜ?」
「ふふ、とりあえず仲間になっておけば?」
「つーかどんな理由があってもこいつは諦めねえぞ」
「この船に乗ってる間くれぇいいんじゃねえか?」
「おれ、に仲間になってほしいゾ!」
「ヨホホ、私もです」
「ちゃん大歓迎だよおおおおおおっ」と目をハートにして迫ってくるサンジと、皆の言葉を聞いて、とりあえず仲間にしていただいておこうかなと少し考えてからゆっくり頷く。それに全員が喜びの声をあげ、ルフィがばっと抱きついてきた。
「私本当に、ネコになれるだけで戦えませんよ」
「おれが守るから問題ねえ!」
「貴女のナイト、サンジです」
「戦闘になりゃネコになって隠れとけ」
「もし怪我したらおれが治してやるからな!」
「勇敢なる海の戦士にまか「私が抱えて一緒に隠れてあげる!」うおい!」
「ふふ、心配いらないわ」
「ま、それくらいが守り甲斐あるってもんよ」
「ヨホホホ、僭越ながら私にも守らせてくださいね」
それぞれの反応に、嬉しくて思わず笑ってしまった。皆はきょとんとしてたけど、私が笑ったままだからか、少し顔を見合わせた後一緒になって笑ってくれた。
