いやまた会いたいわい!って言ったけどね?本当に会えるとは思ってないじゃない?草陰から人間観察するデカい猫ってこれどんな光景よ。そして私の視線の先には友達と楽しげに歩く儚き…男子高校生~~~!しかも未来かよ~~~ってね!というわけで再び夏目の世界エピソードオブ未来をお送りいたします。未来っていうか…in原作って感じ?まあしかし「おひさ~!」とタックルかますわけにもいかないし、私はもう色んなとこ行きすぎて時間の感覚狂ってるから良いけど夏目少年からしたら「いやこの猫何年生きてんの化け猫かよ」って話だから遠目でそのお姿を見守るだけで止めておくんですけどね。10年前後だからあり得る年月だけどもおばあちゃん猫(?)を演じれないし…この健康間違いなしの元気溢れる私にはちょっと…。ただでさえ昔、初見で妖怪と思われたのでな、大人しくしておきましょう。
優しいおじいちゃんおばあちゃんにご飯を恵んでいただきつつ公園や草原などを気ままに散歩して自然を全身で感じる日々を繰り返していたある日。っていうか草原ってこれ、八ツ原ですよね。妖怪いるし寺あるし。あっなんとびっくり妖怪見えるんだぜ!…ほかの世界の妖怪も見えてたし今更か。いやあっちは一般人にも見えてたもんね?それはおいといて、あくまで自然に妖怪たちと距離を取りつつ八ツ原散策をするというのを最近の楽しみにしていたらついに住職さんに見つかりまして。敷地内で日向ぼっこする権利を得てその息子さんともご対面しましてですね。
「ウチも猫飼うのか?」
「いや、よくこの辺りを散歩しているらしい」
「野良か…それにしては綺麗というか、なんか不思議な猫だな」
「ああ、迷い猫かもしれないな」
そんなやり取りがあって田沼家にフェードインした感じです。学校帰りに家周辺にいると田沼くんが嬉しそうに声かけてくれるもんだからつい…なんか居座っている私でございます。
「シロ~」
そしてこの田沼くん。あとお父さん。ゴージャスヘアに埋もれる首輪に気付かず名前を見てないもんで私のことをシロと呼んでいるのだ。なんでや!他の人は結構普通に首輪発見してくれてたのに!別にいいけど、いいんだけどね。縁側に座って笑顔で手を広げる田沼くんをスルー出来るわけもなくその膝にお邪魔する。
「シロってやっぱ普通の猫より大きいよな」
そういう品種なのよ。「ちょっと神秘的だし」とか言って妖怪説たててるけど違うからね。普通の猫ではないけどね!背中を撫でる温かい手に欠伸を零しながら田沼くんの独り言を聞くのがお決まりになってきた。話に出てくる夏目少年はいろいろあるけど元気にやっているようで、密かに安堵する。いろいろ大変そうってやっぱり妖怪、友人帳関係だよねえ。段々と眠気が強まり途切れそうな意識の中で田沼くんから爆弾が落とされた。
「夏目にシロ会わせたいな」
おっとぉ~!
しっ知らんぷりできるかなあ!とちょっぴり焦る私の気持ちなんて誰も知る由もなく、その日は訪れる。しかも田沼家に来るとかだったら心の準備できたのに普通に関係ないところでばったり会ってしまった。いつものように散歩していたら夏目少年withニャンコ先生と鉢合わせたのである。饅頭がどうのと先生が話しているなと思ったら少し先に七辻屋の文字が。アッそりゃ会うわ~!内心頭を抱える私を目にして足を止める夏目少年と、それに気づいて見下ろす先生の視線が集中する。
「……」
「なんだ夏目、こいつを知っているのか?」
「いや…似てるなと思って」
「似てる?何にだ」
「子どもの頃に…一度だけ、会った猫に」
「…ふん そんなことよりまんじゅうだ!」
「あっ先生!」
夏目少年の肩から飛び下りて七辻屋の方へ駆けていく先生に夏目が反射的に手を伸ばすがまったく間に合わず。すぐに追いかけるのかと思いきや手を戻しながらこちらを見て、目線が合うようにゆっくりと腰を落とした。そっと手のひらを出して「おいで」と優しくかけられる声に一瞬間を置きつつも結局近寄る。頭を撫でる夏目少年と、前に会った幼い頃の彼が重なって見え、あのときのおセンチな気分が蘇った。夏目少年の雰囲気かな~。彼といるとどうしても切なくてでも温かい、不思議な気持ちになるわ。
「お前、すごく綺麗だな あのときの猫みたいに」
「クルル」
「首輪してる…?っていうのか」
いい名前だなと微笑む姿のほうがよほど綺麗なんですけども、この胸の高鳴りどうしてくれる…?儚い系美少年ぱねえ!
「夏目?」
「田沼」
「何して、 シロ!」
「シロ?」
夏目少年と私を会わせたいとおっしゃった田沼くんのご登場である。このタイミング、運命すら感じるね。撫でられる私を見つけて駆け寄ってきた田沼くんに夏目少年が首を傾げた。八ツ原で出会ったことを説明している田沼くんに頷きながらも毛をかき分けて首輪を見せる。
「って書いてるぞ」
「ああ、それな 俺も後で気付いたんだ」
気付いてたのかよ。まああれだけ撫でたりしてるんだから分かるわな、それでもあえてシロで通してたのか田沼父子。愛をこめて呼んでくれてるなら何でもいいけども。ニャンコ先生も色んな呼ばれ方してるしね!いっしょいっしょ!軽く言葉を交わした二人はここで別れるようで「よっ」という掛け声と共に田沼くんに抱き上げられる。そして片手を取られ夏目少年に向けて軽く振られる。
「ほらシロ バイバイ~って」
「はは、大人しいな」
「だろ じゃあまたな夏目」
「ああ、 もまた」
「クルル」
重たいだろうに下ろしてくれれば歩いてついて行くんだけど、抱っこされたままなので田沼くんの肩の向こうから手を振っている夏目少年を小さくなるまで見つめた。そしてそのさらに奥からこちらを見ているのであろうニャンコ先生の、なんとも言えない眼差しに一抹の不安を感じる。あれなんか、絶対怪しまれてるよね?
