こちらただいま黒子のバスケの世界におりますどーぞォ!まだ知ってる人には出会ってないけど公園で遊んでる坊やたちがキセキの世代かっけー憧れるー的なことを話していたので間違いないかと思われます。とはいえ世界は広いですからね。誰にも会うことなく子供や他の動物と戯れてグッバイもざらじゃないんで。欲をいえば絡まなくていいからバスケット少年たちのスーパープレイを生で見たい。なんて思いながら公園のブランコに座ってまったりしていたら突然身体が浮いた。えっグッバイ?この世界とグッバイ?
「ああやっぱり猫だ」
「何ソレ、生きてんの?」
グッバイだったら目の前真っ暗になるよね~って黒!私を持ち上げたであろう相手の死んだ魚みたいな真っ黒な眼が視界に広がる。って古橋いいいいい!?さらに原サンと山崎サンじゃないスかまさかの霧崎第一!?山崎が尻尾を鷲掴みしようとしやがったのでその尻尾で思い切り叩いておく。鷲掴みはダメだろ鷲掴みは。それを見て原は山崎を指さして大爆笑している。
「首輪もついてる…?飼い猫か」
「はー笑った…人間に慣れてるっぽいしね」
今度はそっと頭に近づいてくる山崎の手を大人しく迎えるとでれっと顔を緩めた。猫好き?動物好き?前から何となく思ってたけど山崎って良い人?親しみを込めてザキと呼ぶことにしよう。あとそろそろちゃんと抱えるか下ろすかしてほしい。ずっと宙ぶらりんなんだけども。あと古橋の眼が怖いんだけども。光のない眼ですごい見つめてくるんだけどどうしたらいいの?
「何してんだお前ら」
古橋たちの向こうから声をかけられた。さっさと帰れよと続けられた言葉に古橋が身体ごと振り返る。その先には素敵な麻呂眉のあの方がいらっしゃった。
「花宮、猫だ」
「あ?」
だから何だというのが顔全面に表れている。「最初ただの毛玉かと思ってさー」というの原の声を聞いて花宮サンはじっと私を見た。ただの毛玉ってどういうことだってばよ。
「メインクーンか」
彼の頭が良いことは知ってたけど猫の種類も詳しいんスね。古橋に猫好きなのかと聞かれてたまたまテレビで見ただけだと返していた。それを聞いているのかいないのか、古橋は抱きあげたままの私を花宮サンのほうに「抱っこするか?」と突き出す。いや絶対嫌がられるだろこれ。案の定花宮サンは「しねえよ」と眉を寄せた。その反応を見てもなお私を花宮サンに近づける古橋の度胸に感服するわ。古橋なかなかやりおるな。もうちょっとで触れるというところまで寄せられて、ついに花宮サンが手を動かした。左腕でお尻を支え右手を前足のところにあてて、嫌がっていた割にはしっかり抱っこしてくれた。結構な時間宙ぶらりんで困っていたから助かる。感謝の念を込めて彼の胸に頭を擦り寄せて喉を鳴らした。ふと顔を見ると押しつけられて不機嫌そうにしてたはずなのに、眉は寄ったままだが頬がほんのり赤くなっている。私が見ているに気付くとすっと眼を逸らした。…えっ何その反応…私花宮サン苦手だったんだけど何この子かわいいとこあるじゃない好きになりそう…。(チョロい)
「花宮顔赤くね?」
「(ザキ死んだな)」
「…ザキ、明日の練習5倍」
「ごっ…!?」
ショックを受けるザキを放って3人に背を向け歩き出す花宮サン。彼らに見えていないからか、前足を固定してくれていた右手を動かして優しく撫でてくる。そして少し歩いたところにあるベンチの前に立つと、そっと私をベンチの上に座らせた。最後に頭を一撫でして小さく笑う。
「じゃあな」
きゅーん!と胸がときめいたのを確かに感じた。えっ花宮サン…あんな優しい笑顔できるんスね…。3人のもとに戻って行く背中を見つめながらふと思い出した。そういえば霧崎ってもう一人、瀬戸くんっていたよね?その疑問はすぐに解消された。聞こえてくる会話からするに、とっくに帰って(恐らく寝て)るらしい。私今日、花宮サンのファンになりました~。
思わぬ出会いにほくほくして胸がいっぱいになったところで、公園を出てぶらぶらと散歩を始める。しばらく歩いたところで前方に黒いジャージの男の人と桃色髪の女の人を見つけた。Oh…あれ青峰さんと桃井さんじゃないですか?大物発見しちゃったぜ!発見したところで声をかけるわけでもなし、適当なところで曲がろうと思った…んだけど、もし、もし青峰さんについて行って彼がストバスとかで軽ーく運動しようとしてたとしたらあわよくばダンクとか見れちゃったりするんじゃね?でも練習とかしないか?今って原作でいうとどのあたりなんだろう…などということが頭を過ぎり、気付けば足を止めてぼけーっと下を見ていた。ハッいっけね!と顔をあげると目の前に美少女一人。
「(!?!?!?!?)」
「わあ可愛い!ねえ大ちゃんこの子見て!」
「あー?」
「モフモフ猫ちゃん!」
可愛いのは貴女様です~~~(涙)!美少女のきらっきらオーラはんぱねー!なんか良い匂いするー!私の前にしゃがんでいる桃井さんに呼ばれて青峰さんも寄ってきた。桃井さんの隣にしゃがんでじっとこっちを見る。
「首輪ついてんじゃねーか 迷子か?」
「お散歩してるんじゃない?」
「さっき下見てたけど、何か気になるものあったのかなー?」と首を傾げながら私の足下を見る桃井さん可愛い。そんな桃井さんを見る青峰くんの眼は完全に呆れの色を見せていた。そのときに青峰さんが脇に抱えていたボールが地面に置かれる。ぼ、ボール…!いや違うで?猫の本能とかじゃないで?単純に青峰さんバスケしないかなと思っただけやで??私がボールを凝視しているのに気付いた青峰さんが人差し指でつんとこっちに転がした。向かってくるボールを片足をぽんとのせて止める。
「バスケ好きなのか?」
「大ちゃんじゃないんだから…ボールが気になるんだよきっと」
止めたボールをさっきの青峰さんがやったようにちょんと弾いて彼の方に転がす。指で受け止めた青峰さんがもう一度こっちへ転がす。それをまた片足で止めて転がし返す、というのを何度か繰り返していると青峰さんがすごく嬉しそうに笑った。そしてやけに興奮した桃井さんが「動画撮りたい大ちゃんもう一回!」とスマホをこっちに向けるので、またボールを転がし合う。
「こいつ賢ぇな」
「大ちゃんよりね!」
「あん?!」
「それにしてもほんっと可愛い!ほしいいい!」
「おーいお前ら何してんねん」
ころころと飽きることなく繰り返していたら二人の間から別の顔が出てきた。
「今吉サン」
「今吉サン、やあらへんで 飯行こー言うてんのに」
皆先行ってもうたで?とため息を吐く今吉さん。悪童に加えて妖怪にまで会っちゃったよ。何やその子猫か?と言いながらこっちを見る。見てる…よね?細いからわからん。
「この子桐皇のマスコットにしましょう!誠凛のわんちゃんみたいに!」
「おーマスコットなあ…ってこの子首輪ついとるやん無理やろ」
「ですよねー…」
しょぼん、と目に見えて落ち込む桃井さん。マスコットにはなれないけど元気出して!と、擦り寄ると感極まったように抱きしめられた。とんでもない役得である。「そろそろ行くで」という今吉さんに返事して渋々私を地面に下ろし立ち上がる。先に歩き始めた今吉さんを追いかけるように彼女も歩き出した。遅れてボールを持った青峰さんは立ち上がる前にわしゃわしゃと私を撫でて「今度会ったらバスケ見せてやるよ」と笑い二人の後ろをついて行った。
