気がつけば木の上で寝ていたわたくし、ちゃんですおはようございます。さわさわと風に揺れる緑の隙間から見える景色からして恐らくどこかの学校かと思われます。隙間から降りそそぐ日差しとか、なんとなく懐かしい匂いとか、すぐそばで鳴く雀の素晴らしい合唱とか、このままもう一度寝てしまいたいほど居心地が良いものだけど、とりあえずここがどういう世界なのかを調べなければ。そう思い飛び降りて地面に着地した瞬間、バシィっとすごい勢いで何かが真横を跳ねていった。あっぶねー!あと数十センチずれてたら直撃してた!なにいまのめっちゃこわい…え?私が狙われたわけじゃないですよね?平和と見せかけ油断させておいて隙を狙ってきたと?通りすぎていった影の方を振り返るとバウンドしたあと壁にぶつかったのであろうバレーボールがころころと転がっていた。



「ボゲェ!日向ボゲェ!」



日向ですと?まさか、と声のした方をみるとオレンジ髪のそれはそれは可愛い男の子が何かを叫びながらこっちへ走って来る。日向だ…このカワイコちゃん間違いなくハイキュー!!の日向だ…やだ可愛い…ということはさっきのボゲェ!っていうのは影山さんちの飛雄ちゃんですよね?でもって目の前の建物は体育館で今部活中ですね?よし、ここがどこか分かってよかった。とても、平和ですね!命の危険おそらくなし!はっぴー!ひゃっほー!と内心喜んでいたらボールを取りに来たらしい日向が私に気付いた。



「えっネコ!?かわいい!」



きらきら輝く笑顔で言う日向を見つめるとその場でぴょんぴょん飛び出した。なんだこいつ、可愛い。すぐに戻ってこない彼に痺れを切らしたのか飛雄ちゃんが外に出てきた。怒りながら歩いてくる飛雄ちゃんが日向の頭を叩いたところで彼と目が合う。その途端にピシリと身体の動きを止めた飛雄ちゃん。かと思えば何だかそわそわし始めた。最近の悩みは動物に嫌われてるような気がするという飛雄ちゃんがそわそわし始めた。なんだい?もしかして触りたいのかい?ん?触ってみたいのかい?ん?そーっと屈んで恐る恐る手を伸ばしてくる飛雄ちゃんの顔の怖いこと。人間でもびびるわ。横見てごらん、日向が引いてるから。猫と目が合うってことは喧嘩を売ってるって捉えられるのよ飛雄ちゃん。私猫じゃないからいいけど。大人しく頭を撫でられているとりんごほっぺで空いてる手を握り締めぎゅっと目を瞑った。小さく震える飛雄ちゃんはどうやら、感動しているようです。



「(~~~っ!!さ、触れた、かわ…!!!)」



飛雄ちゃんの顔にびびっていた日向が「お前だけずるいぞ!」と言いながらばっとしゃがみ込んで身体を撫でてきた。



「おおおおおっ!ふわっふわ!」
「ばっ、うるせーデカイ声出すなボゲェ!」



触るなり叫んだ日向を「逃げたらどーすんだ!」と睨みつける飛雄ちゃん。いや貴方も負けないくらいデカイ声ですからね。しかし今は私の毛並みへの感動が勝っているのかまるっと無視して「ふわふわー!」と言いながら撫で撫でし続ける日向に内心どや顔。そうだろうそうだろう。色んなところで色んな人がブラッシングしてくれるからね!ふと顎の下を撫でられごろごろと喉が鳴る。私猫じゃないからとか言ったけど…しっかり猫になってるな…。不覚、と細めていた目を開けると握り締めた手を地面に叩きつける飛雄ちゃんの姿が。なんか、喜んでもらえてるようでよかったわ。あと日向くん、同じとこそんなすごい勢いで擦んないでくれまいか。気分的に禿げそう。毛、抜けてない?大丈夫?



「っていうか飼い猫!どーりで人懐っこいわけだ!」
「これ、名前か?」
「えーっと、?かわいー名前だな!」



日向の言葉に素直に頷く飛雄ちゃん。ヘイヘイ!君たちのほうがずっと可愛いですよありがとな!撫で回されていると、ボールを取りに行っただけなのに中々帰ってこない二人を捜す声が聞こえてきた。飛雄ちゃんがそばに転がっていたボールを手に取る。最初の飛雄ちゃんの怒鳴り声からして恐らくボールをこっちに飛ばしたのは日向なんだろうけど、彼は声が聞こえた瞬間立ち上がって体育館に消えていった。日向お前…と何ともいえない気持ちで見送り、横に立っている飛雄ちゃんの方を向く。ボールを両手で持ったまま名残惜しそうに見下ろしてきたので、相手してくれたお礼を込めて足に頭を擦り付けた。ら、驚いたのかボールを落としてしまったようで真ん前で跳ねたボールに思わずビクつく。謝りながらボールを拾って最後に一撫でし、可愛い顔で「またな、」と笑った飛雄ちゃんは来たときと同じように日向に怒鳴りながら戻っていった。
可愛すぎかよ


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