ラッキースケベとは
本日の待ち合わせ場所となっている駅前で切島と上鳴はああじゃないか、こうじゃないかと難しい顔で話し合っていた。
「白のワンピース」
「まあぽいけど…そんなTHEな感じか?」
「絶対似合うっしょ じゃあお前は?」
「ブラウスにふわふわスカート?」
「あ~~~」
想像して額を押さえる上鳴。どっちにしろ可愛いじゃん~!と。もうすぐ来るであろうの私服について議論を交わしていたのだ。そう、今日は・切島・上鳴の3人で遊ぶことになっている。入学したての頃、初めて食堂で話した時に上鳴がおいしいカキ氷の店を探すから一緒に行こうと言っていたのが現実となった。ちなみにはお昼ご飯にとしっかり上鳴が好きなハンバーガー、切島が好きなお肉の両方がメニューにあるおいしいと評判のお店を調べてきている。
「切島くん上鳴くんっおまたせ~!?はやいね!?」
「おうやっぱ女の子待たすわけには、」
「も充分はや、」
駆け足で寄ってくるが着ていたのはハイウエストのフレアミニという切島が言っていた所謂ふわふわスカートだったがデザインがヒョウ柄だった。白とかパステル系を想像してたので一瞬動きが止まったがこれはこれで可愛いし似合ってるので良し。
「どうかした?」
「いや~やっぱ私服だと違うな~ってな!」
「似合ってるぜ!」
「ほんと?2人もかっこいいよ~!素敵だ!」
にこにこと笑っているに、切島と上鳴はそろって胸を押さえギュッと目を瞑りその言葉を噛みしめた。
「いやマジ大当たりだったな!」
「ナイスチョイス様~」
「美味しかったね!お口に合ってよかった~!」
おいしいお肉やハンバーガーをお腹いっぱい食べ、満足満足とお店を出る。おやつにカキ氷を食べに行く前に軽くショッピングでもしようかと話しているところでそれは起こった。同じく店から出てきたであろう子ども、兄弟だろうか。2人して走って来たので先を行っていた子が切島の足にぶつかり転んでしまう。強く打ったお尻の痛みと驚きで火が付いたように泣きだすその子に切島が謝りながら手を貸そうとするが余計に泣いてしまい、後から来た男の子もおろおろと寄り添うしかできずで、ここは私の出番だとが目の前にしゃがみ声を掛けた。
「びっくりしたね、痛かったね、よしよし」
「えええええんっ」
「痛いの痛いのとんでけ~っだよ!」
おまじないしよ!という言葉に一瞬泣き止み、の顔を見て再び涙を流すも今度は両手を伸ばしてきたので抱き上げあやしながら個性を使ってお尻を擦る。これで痛みはすぐに引いただろうが驚いた分の涙は止まらないようでまだ泣き続ける男の子の背中をぽんぽんと撫でていると後から一人女性が出てきた。
「ごめんなさいうちの子がっ」
「俺らもすぐにどかなかったんで!すみません」
事情を話しお互いに謝り母親がから子どもを受け取ろうとすると、その時には落ち着いていたのにイヤイヤとまたもや泣き出す。「おねえちゃんが帰れないでしょ」と困った様子の母親に、大丈夫と笑いながらもこのままではいられないので男の子を離そうとした瞬間その身体が光った。
「あ!!!」
「えっ?」
「この子ったら!ご、ごめんなさい貴女、」
「いえ、私は全然…?」
その後母親に焦った様子でだけ少し離れた場所に誘導され、ついて行き話しを聞いたところ身体が光ったのはやはりその子が個性を使用したからのようで。それがなんともまた、ラッキースケベが起こるというものらしく。効果はそこまで続かないと思うが何があるか分からないので早く帰った方がいいと言われたのだが、イマイチピンとこないというのとせっかく予定を空けてくれた2人に申し訳ないという気持ちがあり悩みながら切島たちのところへ戻った。当然どうしたのか聞かれたが内容がアレなので軽く流してとりあえず移動しようとカキ氷屋さんがあるショッピングモールへ歩き出す。この時点で話して帰るべきだったのだろうが、の頭は個性事故ではなくおいしいカキ氷でいっぱいだったのだ。
「やっぱ治癒の個性、いいよな!」
「マジ、助かったわ~ サンキュー」
「お力になれて良かった、わっ」
道案内というほどでもないが先導して歩いていた上鳴がに笑顔を向け振り返ったそのタイミングでの突風。風のいたずらというやつである。ふわっと見事にめくれ上がったスカート、ばっちり見てしまった男子高校生2人。
「あっご、ごめん!」
「いや俺らがな!?見えてねえけど!」
「ゴメン見えてないからマジで!」
何も知らない2人に申し訳ない事をしたと反省して、もう風の悪戯を受けないように手や鞄で広がらないよう押さえて歩いた。気を取り直してどこから回るか、見たいものがあるかなど話しながらショッピングモールのマップを調べる。と、そこでも「ここ行かね?」と上鳴がアパレルショップを指すのを確認しようと背伸びしたがバランスを崩して上鳴にぶつからないように両手を伸ばした結果、壁面と己でサンドするという壁ドン体勢になってしまった。
「ヒエッ」
「ご、ごめん!ふらついちゃった!」
身体に当たる柔らかい感触に息を呑む上鳴に謝り慌てて離れるもそのせいで後ろにこけそうになるので驚いて流れを見ていた切島が咄嗟に手を伸ばし抱きとめる。
「大丈夫か!? アッ悪い!」
「ご、ごめん2人とも…ほんとに…」
腕に収まるふわふわをばっと離してしかし反動でまたこけないように両肩を掴んでその場に立たせた切島はホッと息をついた。ラッキースケベとはこういうことかと漸く解ってきたは冷や汗を流しながらこれはイカンと2人に先程の母親から聞いた話を伝える。
「ラッ…キー…へえ…つかそういう事は早く言お!?」
「ごめんね…こんなことになるとは…」
「とりあえず送るから今日は帰ろうぜ?」
「えっでも、せっかく予定空けてくれたのに…カキ氷…」
「そういうことな!?俺らの予定なら気にしなくていいからさ!」
「カキ氷もまた今度食べよ!?」
「う、うん…ごめんね、ありがとう…!」
めちゃくちゃカキ氷が食べたかっただがさすがに今日は早く帰宅した方が良さそうだと諦め、これ以上何も起こらないよう3人して全力で気を引き締め妙な距離感で帰宅したのであった。カキ氷は後日食べに行きました。