I LVE YOU

「 今日めちゃくちゃ寒いことを忘れてたよ。 」




年が明け、寒さも本番となる時期。今年一番の寒さが、などとニュースでもよく聞くがここら辺ではあまり雪が降らない。それ自体にさほど思うところはないのだが、先日気になるものを見た。見たというか見せてもらったというか。その日テレビで雪が降る地域や国の野生動物たちの生活が取り上げられており、女子たちが可愛いと口をそろえて話していたのだ。その中でも特に盛り上がりを見せたのが海外の、ユキヒョウの姿が映された時だ。降り積もった雪の上を歩いているユキヒョウに、葉隠や芦戸が「ちゃんだあ!」と手を叩いて喜んでそれに「ちゃんちゃうよ」とツッコミをいれた麗日もにこにこと笑っていた。



さんならきっともっと美しいですわ……」
「ブレないねヤオモモ」
「ケロ でも雪の中にいるちゃんもとっても可愛いと思うわ」
「それはそう」



テレビを見ながらも思い浮かべるのはだったのだろう八百万は頬に手をあてうっとりと呟き、蛙吹と耳郎もそれに頷く。A組女子は同じくクラスメイトのモフモフ代表、を大層可愛がっていた。しかし確かに、あの銀世界の中にがいればそれはとても綺麗だろうと自分も思う。その姿に思い馳せていると話題の人物が現れた。



ちゃんだあ!」
ちゃん!テレビにちゃん出てるよ!」
「どゆこと?……わあ!ユキヒョウだ!」



「可愛いねえ~」と空いてるところに腰を下ろしたに、八百万が振り返って「さんの方が絶対に可愛いですわ!!」と興奮気味に言う。



「そうかな~えへへ、ありがとう~!」
「雪山で遊ぶちゃん見てみたいわ」
「うん?昔のならあるよ!」
「「見せて~~~!!!」」
「ウチも見たい」



それはぜひ俺も見たい。離れたところで女子会(?)を見守っていた轟もその言葉には黙っていられなかった。スマホを操作して芦戸たちに渡し、それを見て黄色い声をあげる女子に紛れ込んで画面を覗くとまだ幼いユキヒョウが雪の上をぴょんぴょんと跳ねながら歩く動画が再生されているではないか。大変ほっこりする。は可愛いな。そう思った直後に芦戸と葉隠が「キャ―――!!」と叫んだので驚いて周りを見れば皆が顔を赤くして、も照れた様子でありがとうと笑っていた。声に出ていたらしい。


そう雪が降ることのないこの地域で、珍しく少し積もった。昨日、今年一番の大寒波がくるとキャスターが言っていたが本当だったようだ。休日であったし稀に見る積雪に朝から敷地内を散歩してみることにした。あたり一面が白いなんてそう拝めるものではない。悪くないなと思いながらしばらく歩いていたが、ふと思い立って来た道を戻る。まだ朝とは言えそこまで早い時間ではないから、どうだろうか。もう起きているだろうか。



「轟くん!おはよ~」
「、
「もうお出かけしてたの?早いねえ~」



寮に入れば目当ての人物、がテーブルでオレンジジュースを飲んでいた。朝食を済ませたところのようだ。



「ちょうどよかった、今から時間あるか?」
「うん?大丈夫だよ!どうかした?」
「散歩、行かねえか」



雪が、綺麗だから。そう誘えばぱっと明るい表情でぜひと立ち上がる。慌てて片付けようと食器をまとめる彼女の背に急がなくていいと声をかけ、少し待てばもこもこの上着を羽織ったふわふわが隣に来た。そして先ほどの道をまた歩いて行く。今度は2人で。

「珍しいよねえ、こんなにつもるの!」
「おお、 雪好きなのか?」
「んっ?好き~!」



わかる?と楽しそうに首を傾げるに頷いた。とても分かりやすい。彼女の立派な尻尾がずっと大きく揺れているから。ご機嫌なを見ているとこちらまで嬉しくなる。それからしばらく進んで、を誘おうと思い立った場所にたどり着いた。続く芝生と樹々の流れの途中、少し開けた場所がある。ここだ、との手を取ってさらに行くと、そこだけ特に陽が差し芝生や葉などに積もった雪がきらきらと輝いていた。わあ、と隣から声が漏れる。



「散歩してるときに見つけて、に見せたいと思って」
「きれい……」



一歩進んで、長いようで短い時間。前を見ていたが振り返った。それに合わせてふわっと一瞬広がる柔らかそうな髪が光を受け雪に負けないくらいきらきらと輝く。



「すごく綺麗!ありがとう轟くん!」



頬を染めて満面の笑みを見せてくれる彼女に自身の顔が緩むのがわかった。すごく綺麗、も含めてそうだなと。先日見せてもらった動画の幼い頃のユキヒョウも可愛かったが、今目の前にいるはもっとずっと美しい。八百万が言っていたことは正しかった。満足して一人頷いていると、がさらに笑うのでどうかしたのかと聞くと鼻にちょんと指をあてる。



「お鼻真っ赤!私もかな?」
「お、……そういえば大寒波、だったな」
「私はまだ寒いのは得意な方だけど~」



「轟くんも個性的なあれで寒いのとか平気な方?」と言うので、うーん?と首を傾げた。



「まあ、それもあるかもしれねえけど」
「うん?」
「さすがに今日は寒い」
「あはは、だよねえ」
「けど、忘れてた がいるからかもしれねえ」



朝一人で散歩したときは普通に寒かったし、今も言われてみれば寒い。でも彼女といるとそういうのを忘れてしまう、というか気にならなくなるというか。自分にとってとてもあたたかい存在なんだな、と改めて気付く朝だった。

診断メーカー様より
夏目漱石が『月がきれいですね』、二葉亭四迷が『しんでもいい』と訳した「I love you」。----- 轟 焦凍は『今日めちゃくちゃ寒いことを忘れてたよ。』と訳しました。