I LVE YOU

「 好きにすれば? 」

 


基本的に爆豪勝己という男は言いたいことはハッキリというし、好き嫌いもハッキリしていそうだし、イヤなものはイヤ、欲しいものは欲しいと言うのだろうと思う。他人に合わせるタイプではないだろうし気を使って自分を曲げるようなこともなさそうだ。その口の悪さや気性の激しい一面が彼の性格を粗暴と評価させることが多いが、クラスメイトとして共に過ごしていればそれだけでないことはよく分かる。爆豪くんは優しい、と口にすると「(ちゃん)からしたらそうだろうな~」と返ってくるので最初ははて?という感じだったのだが最近その意味が少し理解できるようになってきた。気がする。



「飲みモンは」
「あっほしいです~!アイスコ」
「ココアな」
「わあ!うん!ありがとう~」



部屋から下りてきて共有スペースに立ち寄れば爆豪がいたので一緒にテレビ見ようと誘えば飲み物を用意しに行ってくれる彼に、それならば自分はティータイムのお供でも用意しようと「またすぐ戻ってくる!」と声をかけてダッシュで祖父が送ってくれたお気に入りのお菓子をいくつか取りに戻った。が飲むのは大抵ココアか紅茶なので分かりやすいというのもあるだろうが爆豪はいつも食い気味で当ててくる。言われなければ気付かなかったのだが、爆豪が誰かのためにわざわざ飲み物を持ってくる姿はそう見れるものではない。



「どれ食べる~!?」
「……好きにしろや、お前ンだろ」



一緒で良いから好きなモン食え。と目の前に並べられたお菓子を見比べてそう言う爆豪に、そもそもラインナップがチョコマシュマロかチョコチップクッキーかチョコパイかというチョコの主張が激しすぎる内容なので彼からすればどれもお断りかもしれない。爆豪は辛いモノ好きであった。一番甘さがマシそうなチョコチップクッキーを選んで開け、次にテレビは何を見るかとチャンネルを変えながら聞けば似たような返事が返ってくる。



「見たいのなかった?バラエティにしていい?」
「好きにしろ」
「ありがとう~!他のが良くなったら言って!」



好きにしろ、この言葉は爆豪の口癖なのだろうかとは思う。好き嫌いがハッキリとしていそうで、イヤなものは見ない食べない必要ないときっぱり断りそうだと思うのでこう言われるときは本当にこちらの好きにしていいのだろうと解釈しているがもし無理をさせてしまっていたら申し訳ない。クッキーをかじり、もしつまらなさそうなら別の番組にしようかなと爆豪の表情をちらり横目で確認すればバチ、と視線が合った。



「ンだよ」
「え!なっなんでもござらんっ」
「ハ、サムライかよ」



まさか目が合うと思わず変な口調になってしまったが、退屈している様子ではない。いや、今笑っているのは己がサムライと化したからなのだろうが。あまり見られないのだが爆豪の含みのない笑った顔は可愛いとは思う。芦戸たちも言っていたがやはり爆豪の顔は整っているな、と。テレビを見ているのを忘れてまじまじと観察していれば「……テレビいいンか、ハムスター出てる」と言われ勢いよく画面に顔を戻した。動物のおもしろ動画は最高の癒しである。少ししてちらほらと他の人も共有スペースに姿を見せ爆豪が動物の番組を見ていることを揶揄ったりしていたのだが舌打ちをし低く唸るように怒っていていつものような大きな声ではない。それが自分を気遣ってのことだというのも、最近気付いたのだ。


とある休みの日、たまたま外出先で爆豪と会った。そんなことあるんだなあと思ったが、アウトドア用品のお店だったのでまあもし爆豪と鉢合わせるならばここだなという感じでもある。自分はウインドウショッピングのつもりだったのだが彼は必要なものを買いに来たようでついて行っていいか聞けば頷くので遠慮なく後ろをついて回った。買い物を終えちょうど昼時だったので一緒に食べて帰る流れになり、どこに行くかと店を探す。



「バーガー?お肉?中華?どうしよ~」
「好きにしろ」



でた、と思った。好きにしろと言って本当にがパンケーキやパフェなどと言い出したら爆豪はどんな反応をするのだろう。お昼はがっつり食べたい派なので言わないが、いつもそう言う彼に気になって聞いてみれば「どこ行ってもなんかはあンだろ」とのことで本当にどこでもいいらしい。



「爆豪くん辛いの好きだよね?中華にする?カレー?」
「……そうなるから好きにしろっつってンだ」
「えー!?それこそ私も食べれるのあるよっ」



「爆豪くんの好きなものあるところに行こ!」と続けると少し考えて中華と返事がもらえたので一番近い店を検索し向かった。も爆豪ほど辛いものが得意なわけではないが好きだし、中華であれば大好物の唐揚げがあるしカレーだって好きだ。店に向かいながらそう話せばそれでも「次はお前の好きにしろ」と言われる。じゃあそのさらに次は爆豪の好きなものにしよう。順番に、と笑えば何とも言えない表情を向けられた。



「私唐揚げ定食にしよ~」
「ン」
「ん、え!?買っちゃった!?お金返すよ!」
「いらね」



券売機タイプのお店だったので爆豪が麻婆豆腐を選んでるときに自分は唐揚げにしようと口に出せばピッという音がして爆豪が2人分の食券を発行したのだと分かり、財布を出すも断固拒否される。



「だめだよ払うよっ」
「財布しまえ ソイツに出番はねェっつっとけ」
「え!?なにそれかっこいい~私も使っていい?」
「どこで使うンだよ」
「次回爆豪くんに!今日はいただきます……ありがとう~!」
「次回もお前の財布に出番はねェ」



結局受け取ってもらえず「出番ないんだって……」と財布に声かければ前を歩く爆豪からハッと笑い声が聞こえた。

そうやって、爆豪と共に何かをするとき、何かを選ぶとき。必ず好きにしろと言われることに、は祖父の姿を思い浮かべる。おじいちゃんもいつも好きにしろと言ってくれるのだ。自分が大層甘やかしてもらっているのだと分かっているが相手が家族である祖父ならばそれを違和感なく受け止められる。爆豪は、は優しい人だと思っているが周りが言うように確かに誰にでもそうではないことはさすがにもう理解できた。



「私の財布が出番欲しがってるけどいつお出かけするっ?」
「出番ねンだよ……休みならいつでもいい」



「活躍させてほしい……」と呟いてもそこはスルーされ、食べたいものを考えていろと言われる。



「ついでに他に行きたいところあったりする?」
「あ?別に……お前の好きにしろや」



今日も出た、いよいよ聞き慣れてしまったいつもの言葉。爆豪はどうして自分に対してこうも優しくしてくれるのかと、爆豪が他の人には言わないことにも気付いてしまってからはよく考えるようになった。「勝手にしろ」と投げ捨てていることはあるが、少しニュアンスが違う気がするのだ。



「私雑貨屋さんとかみたいなーって思ってるけど……」
「ン」
「ファンシーな感じだよ?大丈夫?」
「付き合うっつってンだ」
「わあ、やった!ありがとう~!」



爆豪はどうして自分に「好きにしろ」と言ってくれるのだろう。祖父は、たった一人の孫であるを可愛がってくれているからだと考えなくても分かる。例えば自分が爆豪のように誰かに「好きにしていいよ」と言えるとしたら、どんなときだろう。やっぱり相手にたくさんのことを許していて、好きだから。その人が好きだから何でもいいと思えるんじゃないか。そこまで考えて、いやでもそれはさすがにと首を振る。突然ブンブン首を動かすを爆豪が片眉を上げて見やるので何でもないと笑った。



「爆豪くんは優しいな~と思って!」
「ハア?」
「お買い物付き合ってくれるしご飯もご馳走してくれて、普段もたくさん助けてくれるし、好きにしろって選ばせてくれるし……言葉にすると私本当にしてもらってばっかだね!?」



これまでのことを思い出しながら言えば本当にたくさん世話になっている。「お礼をしなければ!次こそは私の出番だ!」と両手で握りこぶしを作ったがやはり「いらね」と一蹴されてしまう。そう言われることは予想していたので気にせず自分も爆豪の力になるぞ、と気合をいれるを眺めながら爆豪は別に優しくしているわけではないと内心思った。ただ、愛しているだけだと。

診断メーカー様より
夏目漱石が『月がきれいですね』、二葉亭四迷が『しんでもいい』と訳した「I love you」。----- 爆豪 勝己は『好きにすれば?』と訳しました。